Meaning

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日記と言うより言葉を徒然と。

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白い羽根見つけた
白いハネ視つけた


このセカイにたった一つだけ願うとするなら
たった一人でいい。

僕に愛を教えてくれる人と出逢いたい。


溶かしていく白い羽根
融かしていく白いハネ


それがそれだけが僕の願い事。
やっと見つけてくれた人。


解けていく白い羽根
熔けていく白いハネ


何を差し出しても埋められない。
何を引き換えにしても得られない。


だからどうか僕が要らなくなったら
貴方の一言で切り捨ててください。



玩具のように。


月の女神が唯一度叫んだ僕の名前。


星の祝福を身に纏い
色彩はなく
薄明かりの中で
月は浮かぶ。


生きるコトを辞めようとした僕に叱責などなく
選ぶだけの気力も判断力も乏しく。


なんとなく
静かに
見上げた空には
朧月がぼんやりと。


太陽が照り付けるモノに未練などある筈もなく
陽に透けた赤い色だけが鮮明に写って渇いていく


止めないで
止めよう


相反する台詞が責める意識の中で
深い影に覆われる。


同化を願う其れと
拒絶の思いが
攻めぎあって

止める術等持つ筈もなく
置かれた自分から離れて見つめる自分に
助けを求めて叫んだ。


救われると信じたかった。


信じることなんか遠い昔に棄てたことなのに。

「はぁ・・・やっと今日のお仕事も終わりました・・・早く帰って優雅なバスタイムを過ごさねば」
言いながら執務室の戸締りを確認する憂。
夜もすっかり更け辺りには人の気配もない。
ランプの灯を一つ一つ落とし建物から灯りを消していく。
数日後に迫る出陣の為にいつもより多い業務のせいで身体がくたくただ。
『今日の入浴剤は何にしようかなぁ』
そんなことを考えつつゆっくりとした足取りで歩みを進める。


カサッ


不意に物音が聞こえた。
草擦れの音ならそんなに気に留める必要もないのに何故か耳に障る。
耳を澄ませば紛れも無くヒトの歩みの音だった。
『・・・物盗り?でもまさかコンナトコロに・・・』
そっと足音を殺して物音のした方へ進路を曲げた。
憂も軍人の端くれだ。
気配を消すことくらいわけもないし数人相手くらいなら引けを取らない程の武芸の腕前はある。
恐怖ではなく、ただ不安が胸を覆った。
何度か建物の角を折れ足を止める。


「・・・後に・・・る。・・・こで・・・」
声が途切れ途切れに聞こえる。
「泰央が居なくなれば戦力も減る。この国も崩しやすくなろう」
聞き慣れた名と声だった。
「その日の前にもう一度確認して置きたい」
声のトーンが一層落ちる。
「この国をそちらに明け渡せば私はこの国を領地として貰い受けることが出来るのだな?」
「はい、それはこちらの国主も了承済みです。但し、毎月の上納品はお忘れの無きよう・・・」
「解ってるおる。それではまた戦後に」
「戦後に」
話は済んだようで慌てて憂はその場にしゃがみ込み身体を隠す。
高い植え込みがあるおかげでそう簡単には見つからぬ筈とじっと息を潜める。
やがて通り過ぎる人影を見送って深く息をした。
見覚えのある人相だった。
「・・・あれは黄土宰相・・・?」
話の内容を思い返す。
それは紛れも無い謀反の密談だった。

月夜を眺めて思い出すのは今日のこと。
ほんの一時の夢のような時間を過ごした今日のこと。
だけれど。
散々他人の命を無惨に散らしてきた自分にシアワセな時間などあっていいものかと責め立てる心も存在していた。


彼女には他人が持たない力があった。
炎を意のままに操る力。
ほんの小さな火種さえあればそれだけで辺りを燃やし尽くせる炎に変えることさえ可能だった。
逆もまた然り。
善行に使うことも出来た筈なのに彼女の父は己の欲の為に力を振るわせた。
始めはただ、認めて欲しかった。
父に自分の存在を認めて褒めてもらいたいと思った。
母に怖がられても何時か認めてもらいたい、そう思って父の言う事を聞いた。
それが間違いだと気付いた頃にはもう遅かった。


ごめんなさい。


一晩中謝罪し続けたこともあった。
自分を傷つけたこともあった。
どれだけ自分を責めても結局は未だ生きている。
惨めったらしいと思いながらも。

真っ白な封筒をペーパーナイフで開ける。
中には封筒より一回り小さい白い紙が入っていた。


「・・・っ」


書かれていた名は彼のものだった。

『第三機動軍軍師長 泰央』


思考が纏まらなくなった。
読み違えだと思いたくて何度も読み直した。
けれどそれは紛うことなく彼の名だった。

この世界は争いに満ちている。
隣国からの侵略と自国の侵攻のせいで。
彼等は求める貪欲に。
食べ物も命も快楽も。
その犠牲は多く得られる物と釣り合うはずもないのに。


翠蓮もまた、その犠牲者。
彼女に与えられた異能が彼女を犠牲者へと導いた。

銀も犠牲者の1人。
戦争に親兄弟を奪われ自身も命を落としかけた。
目の前で無惨に死に逝く家族や知り合いに絶望し、自分もこうなるのだと運命の業火を受け入れかけた時だった。
赤い炎だけが視界を埋め尽くす中、薄紫色の細く長い髪が舞い込んだ。
驚いて視線を動かすと自分よりもまだ幼いだろう少女がこちらに向かって歩みを進めていた。
少女の衣服は血で赤く染まり土ぼこりで汚れている。
けれどその顔には一点の汚れも無く微笑だけが浮かんでいた。
「…あなた…よかった、まだ…生きている人が居て」
そう言って薄紫色の髪をした少女は手を差し伸べる。
「いきましょう?わたしと」
銀は動けずにただ心を奪われていた。
「怪我をしているの?動けない?」
心配そうな表情を浮かべて座り込んで身動きが取れずにいる銀の顔を覗き込む。
「…」
「…わたしが…こわい?」
少女の顔が曇る。
「…そ…んな…ことは…」
「…わたしは翠蓮。あなたのお名前は?」
「…銀」
「そう、素敵なお名前ね。ねぇ、銀、私と一緒にいきましょう?
…とても悲しいけれど…もう此処には…誰も居ないから…」
きっと少女は泣いていた。
涙を零してはいなかったけれど。
「でも…」
「厭かしら?」
「…いいえ…」


手を引かれて屋敷に行った。
長い道のりだったように思う。
時折会話もした気もするけれどあまり記憶には残っていない。

その後、翠蓮が怒号を飛ばす父親を説き伏せ銀はこの屋敷に住まうことになる。
翠蓮の警護役として雇われて。

強くなりたい。


一人で立って歩けるぐらい。


夢中に走れるくらい。


側に入る人の弱さに気付けて包み込めるぐらい。


心に余裕を持てるくらい。


他人を許せる強さが欲しい。




そんな人間なんてこの世界にはきっと居ないのでしょう。
自分も含めて。


父親は力が欲しかった。権力や財力を貪欲に求めて娘を“売”った。
戦神と言う名の殺人鬼として。

母親は時折痛々しい目で娘を見ていたが贅沢な暮らしを手放す気にはなれなかったらしくそのうちに姿を見ることすら少なくなった。


「翠蓮はまだ戻らんのか!?」
使用人に怒鳴りつけているのは翠蓮の父・黄土。
「はい、屋敷近くにはいらっしゃいませんようで・・・」
「さっさと連れ戻さんか!銀はどうした!?」
「銀は翠蓮様をお探しに…」
「…っどいつもこいつも役に立たん!」
顔を真っ赤にして憤怒を表す黄土に使用人たちは怯えを抱く。
下手に触れて手をあげられるとつけられるとたまったものではない。
「そうがならずとも良いではありませんか父上」
「翠蓮!どこに行っておった!?」
「少し外の空気を吸いに行っただけです、ねぇ、銀」
先ほどまでの態度とは打って変り冷徹な表情を見せる。
親子であるとは思えぬ距離が2人の間にはあった。
「はい」
「貴様は大事な儂の手駒だ!勝手な行動は慎め!」
怒号と共に飛んで来る手が翠蓮の頬を打つ。
「っ旦那様!」
「銀、部屋に戻るわ。貴方ももうおやすみなさい」
赤く染まった頬をものともせぬように彼女は平然と踵を返し歩みを進める。
この屋敷で唯一安らげる自室へと戻るために。
「…翠蓮様…承知致しました」
「翠蓮!書状を預かっている。読んでおけ」
「…」
乱暴に手渡されたのは真っ白な封筒。
中身は読まずともわかる。
記されているのは見知らぬ誰かの名前だけ。
これから殺める人の名前だけ。


開け放した窓から冷たい風が流れ込む。
今夜は新月でいつもより光の無い空が睡の心を落ち着かせた。
「また…殺めるのか…」
コンコンコンッ
ふいにドアのノック音が聞こえる。
「…?誰?」
「銀です」
「入っていらっしゃい」
「温い飲み物をお持ちしました」
令状に心を痛める翠蓮には銀の心遣いが胸に痛かった。
「ありがとう」

半刻ほどの間静かな時間が流れる。
「ねぇ銀。貴方は疑問に思ったことはない?どうして今自分はここに居るのかって」
俯きながら問い掛ける彼女に
「…ありません。私は貴女に出逢った日から貴女が望まぬ限り貴女にお仕えすると決めしたから」
迷いの無い真っ直ぐな瞳で彼は答える。
「…貴方は強いわね」
「いえ、そのような事は…」
「…私はどこで…間違ってしまったのかしら…」
むしろ始めから間違っていたのかもしれない。
もしもやり直すことができるなら生まれる前に生まれないことを選びたい。
「翠蓮様…」
痛々しいほどの感情が流れ込んで来る。
肩が震えて俯いてあの日のまま変わらない人がここに居る。
この人が泣かないように笑えるように寂しくならないように側に居る事を決めたのに。
あの日のまま何も出来ずに無力感に支配される自分が居る。
「…貴女のおかげで生き長らえた者も居ます。此処にも、遥か遠くの地にも。」
こんな言葉を紡ぐことしか出来ない自分がもどかしかった。
「…ありがとう…銀…」


空が白く染まる頃
いつかの憧れ映す鏡に成るでしょう


何にでも夢を見た
何にでもなれる気がしてた


僕はもう幼い僕を忘れてる


人は大人になるほど失って
人は子どもで在るほど壊してた
戸惑いながら歩み続けて
僕らは何を得られるのだろう

NOT FOUND MY...


海に深く包まれた時
いつかの想い出蘇ると知るでしょう


優しさに傷ついた
優しさが痛々しくて


君はもう僕よりずっと大人になった


誰も大人に成ること望みながら
誰もが子どもで居ること夢見てる
歩きながら迷い続けて
僕らは何を得たいのだろう

I FIND MY...

頬を伝い始めた雫を掬って彼女の身体を抱き寄せた。
怖くて今まで出来なかったけれど。
今だって怖いけれど。
壊しそうで。
でも壊れるきっかけは作ってしまった。

「・・・ありがとう・・・ございます・・・」


暖かくて温かくて。
優しかった。

彼が剣を振るうのは自分のため。
共に戦う仲間を守るため。自分自身を守るため。
でもこれからは彼女を護るためにも振るいたい。

初めて知った愛しいという感情。
たった1つの想いのカタチ。


「・・・月が出てきましたね」
2人で誰も居なくなった空を眺める。
今度はもっと近い距離で。
「そうだな」
「・・・そろそろ・・・迎えがきます」
「追いかえそっか」
「駄目ですよ」
泰央と翠蓮は向かい合って。
「また明日、此処でお会いしましょう?泰央」
初めての約束。
初めて・・・
「?」
「・・・初めて翠蓮に名前呼ばれた」
顔を赤くして彼は言った。嬉しそうに。
「・・・そうでしたっけ」
「そ」
ふいに愛しくなってまた翠蓮を抱きしめた。
何度もきつく。
「ちょっ・・・泰央・・・!」
「・・・また、明日な」
翠蓮の手を取って手の甲に口付ける。
「・・・っ」
「・・・顔まで真っ赤」
「~~~からかわないでくださいっ」
「じゃぁな」
ひらひらと手を挙げて別れる。

明日もまた会おうと約束して。



「・・・翠蓮様」
後ろからかけられた言葉で一気に現実へと引き戻される。
「銀・・・」
「父君に翠蓮様を御捜ししております。騒ぎが大きくならないうちにお戻りを」
「そう…なら少し急いて帰りましょうか」
「はい」
うやうやしく頭をたれた後、彼は彼女の一歩後を歩き始めたのだった。

森の奥で目覚め始めた獣の声
静かに流れる川の囁きに目を向けて
遥か広がる大地の呼び声に耳を傾けて
遠い空を仰いだ


空に輝く星は
独りぼっちで
それでも白く淡く
同じように孤独な者たちを
深い迷い路を照らしてる


だから怯えても
迷っても悩んでも立ち止まっても
歩き出すこと止めないで

寂しくても

足下を静かに照らしてくれているから


愛しくなるよ


きっとそのうち見つかるから…