「元気なもんかよっ!!」

その言葉を最後にマント男は再び逃亡をはかる。

持てる限りの力で。


「このままじゃ俺あいつらに殺される!!」

体中がギシギシと音を立てていたが、そんなことは気にしてられない。


「マオちゃん・・・懲りないね」


「マオちゃん・・・元気だね」


「おかしいなぁ・・・昨日殺すよって言ったの聞こえなかったのかなぁ?」


「いや、聞こえてたんじゃない?」


「じゃあスゴイ度胸だね」


「そうだね。そろそろ追おうか」

ベータとアルファが立ち上がり、マント男が走り去っていった方向を見つめる。

「やってられるか!」

マント男が走る。


「なんで俺ばっかり!」

マント男がぶつぶつと呟きながら走る。


「だいたいあの二人相手なんて無理があるんだ!」

マント男が怒鳴りながら走る。


「あーっ!もうなんかイライラしてきた!」


「そうか」


「そうだっ!!・・・?」

不意に返された返事にマント男が首を捻る。


捻ったその先には・・・。


「絶対イヤッ!!」

ルカがぶるぶると首を振り、後ずさっていく。


「さぁ、マオちゃんそろそろ時間だよ」


「起きそうもないね。このまま連れてけば?」


「そだね」

ルカとジンがぎゃあぎゃあと騒いでいる間にマント男を担ぎ歩き出す。



「マオちゃん!!起きて!マオちゃんっ!」


「うっ・・・」


「あ、起きた!」


「時間だよ、マオちゃん。今日も昨日の続きね」

ボーッとするマント男にベータが目の覚めるような事実を突き付ける。


「今日も昨日の続き?・・・・えぇぇっ!もう無理だって!!」

ガバッと身体を起こしたが、体中の痛みに呻いて再び横になる。


「だって昨日できなかったでしょ?」


「・・・」

出来なかったのは事実で返す言葉もない。


「横になってるからちょうどいいね。このまま始めよっか」


軽いノリでいるベータとは違い、マント男の空気は思い。


「やめろって!!だいたいそんなに関節外す奴に会ったことない!」

マント男が膝に力を入れて立ち上がる。


「なんだ、元気じゃん!」


30秒が経過し、ベータが次の関節を外しに近付いても、何も反応を示さない。


「あれだけ抵抗してたのに・・・」


「ねぇベータ、また明日にしたら?これ以上やってもつまんない!」

アルファがベータを止める。


ただしそれは決してマント男のためなどではなく、自分が飽きてきたからだ。


何の抵抗もせず抗いもしないマント男に。


「そうだね、もうこれ以上やっても成果になりそうにないから・・・マオちゃんまた明日ね・・・って寝ちゃった」

もうすでに意識のないマント男にクスリと笑う。


「寝たんじゃなくて落ちたって言うんじゃない?」

アルファも笑う。



「ねぇ、マオ全然起きないね?」

合流した後も全く目を覚ます気配のないマント男にルカが心配そうにする。


「疲れてるんだろう?寝かせておいてやれよ」

ジンが通りすがる。


「こんなになるまで稽古する必要あるの?マオは強いじゃん!」


「そうだな、おまえよりは断然強いな。本当に毎日やった方がいいのはお前かもな・・・」