BLOOD FLOWER (ブラッドフラワー)

(連載ファンタジー小説)桜美林大学漫画ゲーム研究会

 



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あいさつ

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神国編 第二章

2012年10月04日 |  神国編
お久しぶり……過ぎますね。 もしかしたら、ひっそりと続きを書き始めるかも知れないです。一応、自分の処女作ですし。リリとジルバの結末を書いてあげないと可哀想だとも思いました。結末は考えています。ただそこに行き着くまでが難儀ですね。 . . . 本文を読む

世界よりも信じるもの 2

2012年06月14日 |  旅人達の短編集
 酒場の中ではランタンの光が暗闇を照らしていた。それでも比率としては暗闇の方が多い。隣の席に何人いるか分からないほどだった。  三人掛けの卓が八つくらいしかない小さな酒場だ。  皿に残った焼き豚の油を舐めるように平らげていたリリィは、今や夢の中だ。すーすーすーと嵐の後の静けさを醸し出していた。長い睫毛と、頬紅を付けたような桃色のほっぺたが、緩徐に動くたびにジルバは見とれてしまう。それを . . . 本文を読む

世界よりも信じるもの 1

2012年06月14日 |  旅人達の短編集
 世界を信じるより、傍にいる誰かを信じた方が簡単だ。と言う言葉は、とある修道会を訪れたときに耳にしたものだった。ジルバは、もっともだ、とその修道士の説法を聞いていたのだが、リリィの腹の虫が治まらなかったのを見て、早くここから立ち去ろうと重い腰を上げた。それは秋も深まったある日の出来事だった。  刈られた稲穂の後が枯れ始めて田んぼにひびが入っていた。そんな村を見下ろしながら、ジルバ達は丘を上 . . . 本文を読む

神国編 第一章

2010年02月20日 |  神国編
 ――その青い一迅の風が、決闘の決着を暗示させた。  草を刈る切っ先が、赤い花弁を巻きあげ、鈍い褐色の火花を散らす。  影を背負うようにして佇む二人の剣士は、お互いの譲れぬ思いを、夜の帳を引き裂くようにして剣に乗せた。  不意に風が去った。ジルバは下段を刈る。リアは直線に突いた。 「ジルバ……」 「兄様の勝ちです」  膝から崩れ落ちるジルバに向かって、リリは駆け寄った。それは無意識 . . . 本文を読む

新年のご挨拶

2010年02月17日 | あいさつ
 皆さま、新年あけましておめでとうございます。  今年の抱負は、先のことを考えてクヨクヨしない、です。  僕は、どこか卑屈になる節があり、自分でもなんとか直したいのですが、なかなかうまくいきません。  ところで皆さんは、三が日などはどのようにして過ごしましたでしょうか?  書き初めや、初詣などが定番でしょうか。なんといっても、お年玉は楽しみですね。  この年になると、貰える額ではなく、 . . . 本文を読む

キリアド王国編 あとがき

2009年11月06日 |  キリアド王国編
 ~時間稼ぎのためのあとがきコーナー~  こんにちわ。作者の律氏です。お読み頂きありがとうございます。  『キリアド王国編』がようやく終わりました。ああ長かった。  ひどいですねー。我ながら、ひどいもんだと思います。こんなの人様に見せるというのはどうなんでしょうか?   ――バカヤロ。コンナノ、ショウセツジャネエ。シュギョウシナオシテコイ。  まぁ何はともあれ、やっと終わったーという . . . 本文を読む

キリアド王国 真章九十三章 

2009年11月05日 |  キリアド王国編
 ハルカはジルバの気迫に押されて、じりっと後ずさりする。緊張が走った。  しかし、その時、 「ジルバっ。今日は肉よ。にくぅ! ちょっと聞いてる、のー」  と、リリが間の抜けた寝言を言った。  ハルカはくすりと笑い。ジルバはため息をついた。 「知っていますか。ジルバさん。赤き花の悪魔は、冷徹無比に残虐の限りを尽くし、人殺しを働くそうなのです」  ジルバはジョッキを置いて、テーブルの中央 . . . 本文を読む

キリアド王国 真章九十二章

2009年11月04日 |  キリアド王国編
「では私達はこれで。あの、この度は色々とありがとうございました。ジルバさん達がいなければ今頃どうなっていたか。これはほんのお礼です。どうぞ御納めください」  ハルカは懐から金貨の入った袋を出してテーブルの上に置く。目配せてお辞儀をする。ジルバは呻くように、ああと言っただけで袋に手をつけない。 「もう国を発たれてしまうのですか」 「用事を済ませたらな」  ジルバは、先程届いた一通の文を見る . . . 本文を読む

キリアド王国 真章九十一章

2009年11月03日 |  キリアド王国編
 染み付いた雨と酒の匂い。喜怒哀楽雑じりの想いがそこには詰まっている。どんなに時が経ろうと変わらない。もう一度その匂いを嗅げば、思い出せる。それはあたかも世界に記憶された物語の断片のようであった。  リリはすでにテーブルに突っ伏して眠っていた。とても気持ちよさそうな寝顔である。ジルバは目尻で微笑した。 「お嬢様。そろそろ」   ユザはハルカに言った。ハルカは若干酔って潤んだ目をユザに向ける . . . 本文を読む

キリアド王国 真章九十章

2009年11月02日 |  キリアド王国編
「それから、もう一つ気になっていることが……」  ハルカはそう言って、困惑した表情を浮かべた。しかし、それをすぐに打ち消し、口を開く。 「マルコの尋問には私と父上が立ち会いましたが、その際にマルコがうわ言のように呟いたのです。……白き神、白き神、白き神と何度も何度も繰り返して。その意味を尋問官が問うても、一向に喋ろうとしませんでした」  ジルバは、一瞬険しい表情を湛えて、やがて口元を自然に . . . 本文を読む

キリアド王国 真章八十九章

2009年11月01日 |  キリアド王国編
「あの男の様子はどうだ」  ジルバの質問に、ハルカは傾倒していた首をしゃんと伸ばし表情を引き締めた。 「マルコは……死にました」  ハルカの表情が翳る。微妙な空白が辺りを席巻した後、ジルバが口を開いた。 「死んだのか」 「ええ。父上が帰国してすぐ、マルコの尋問が行われたのですが、マルコは黙していて何も語りませんでした。……次の日、牢の中で血まみれになっていたそうです。自分で自分の喉を引 . . . 本文を読む

キリアド王国 真章八十八章

2009年10月31日 |  キリアド王国編
 二人組は粛々と移動し、空いていた椅子に座る。二人のうちの背の高い方は、水を払いながらフードを外して、顔を見せた。栗色の艶めかしい髪が蝋燭の滲んだ灯りに映える。  「王女がこんな夜更けに城を抜け出して良いのですか」  アリスが声を潜めずに訊く。配慮の欠片も無い態度だが、ハルカは笑った。 「大丈夫です。いえ、むしろ今しか会えないでしょう。父上の帰還式で国中が一色の今なら――」 「会っても大 . . . 本文を読む

キリアド王国 真章八十七章

2009年10月30日 |  キリアド王国編
   雨の王国。人が行き交う大通りを外れた、小道の脇。佇む一軒の宿屋。レンガ造りの宿屋、一階は酒場である。その酒場の隅のテーブル。珍妙な様相の三人が卓を囲んでいた。 「おかわりっ」  リリが鈍い鼠色をしたジョッキを掲げて叫んだ。蒸留をされてない安い酒では酔うはずがないのだが限度がある。リリは酔わざる限度を軽く三杯は越えていた。リリの頬には赤みが差していた。 「飲み過ぎです」  アリスは無感 . . . 本文を読む

キリアド王国 真章八十六章

2009年10月29日 |  キリアド王国編
 ジルバは、剣を鞘に戻した。肘を曲げ、腰を少し揺らすだけでも、痛む。ジルバは苦悶の表情を浮かべた。しかし、痛みは徐々に弱まってきているようだった。  ――痛みに慣れてきたか。あるいは、治ってきたか。どちらにせよ、もう動けはしないな。 「ジルバ……!」  不意にジルバは重みを感じた。リリに飛びつかれたのである。リリ一人を支えきれない、ジルバは少しよろめいた。 「リリ。やめろ」  だが、リ . . . 本文を読む

キリアド王国 真章八十五章

2009年10月28日 |  キリアド王国編
 ユザは肩口に浅く刺さった短刀を、激しい痛みと共に抜き放った。倒れたマルコに馬乗りになって、自らの血がしたたる切っ先をマルコの眼球の前に置く。 「……やめでぐれ」  目をぎゅっと瞑ったマルコは、口元を歪めて、微かに言う。 「だめだ。あたしはお前を殺す。今すぐに、切り裂いてやる。――だが、お前を殺すかどうかを決めるのはあたしじゃない」  ユザはハルカを見上げた。ハルカは、ゆっくりと瞬きを . . . 本文を読む